野菜を育てるためにあると便利なものであることは間違いありませんが、消費者の方にとっては身体に毒であるといった印象の方が俄然強いと思います。
しかし、我が国の農薬基準には恐ろしい事情が隠されているのです。
今回は知らないと損をする、日本の農薬基準の定め方についてお話していきたいと思います。
もくじ
日本の農薬基準
2017年に国会の衆議院農林水産委員会で取り上げられた「ネオニコ系農薬スルホキサフロルの残留基準値問題」を例にあげてお話ししたいと思います。
結論から申しますと、日本政府の農薬基準の定め方は科学的ではないことが明らかになりました。
まず、残留基準値案は、試験用の農地で作物を栽培し、規定の農薬使用方法にもとづき残留農薬を測って、この測定値を元に基準値を決めていくという流れとなりました。
ここまでは良いのですが、この後とんでもない事実が露呈するのです。
科学的根拠皆無の経験則?!
本来OECD諸国では、残留基準値を決める共通の計算プログラムがあり、客観的に残留基準値を算出することになっているはずなのですが、日本では違うとのこと。
日本では、測定した数値から残留基準値を導きだすために、多くの場合、数式などによる計算ではなく、科学的根拠のない経験則で決めているという事実が明らかになったのです。
例えば、厚生労働省にグリーンピースの基準を確認してみたところ、サンプルの農産物を測定した数値が低めだったときは、それに4とか5を経験則に基づいて掛け算しているそうで、これが支離滅裂な値であることは言うまでもありません。
そしてこれまた大問題なのですが、本来OECDが定める残留基準値の算出方法は、一つの農薬について同じ作物の試験データ数が8つ以上必要なのに対し、日本でのスルホキサフロルの試験データ数は米だけ4つで、他は1つか2つだけだったそうです。
もちろん今回の例以外にも、他の農薬でも同じようにデータ不足で、多くの場合「科学的根拠のない経験則」によって決めているとのことで、日本の農薬基準は、安全の保障なんてお笑い種な設定方法だったわけです。
甘い基準による問題点
この基準のように、実際の試験結果と経験則で設定した基準との差が大きいと、その幅のなかで農薬の使用方法が不適正でも許される可能性がでてきてしまいます。
もう少し詳しく説明すると、農薬取締法で定めている使用方法と異なった使い方をしても、残留基準値が高く設定されていれば安全というレッテルが貼られてしまい、さも問題ないかのように流通できてしまうという、落とし穴ができてしまったということなのです。
当たり前の話ですが、適当に決められた安全基準と知って、安心できる人などいないはずです。
しかしながら、ほとんどの方々が、この事実を知らないといった現状があることも問題なのではないでしょうか?
改善の余地はあるのか?
この残留基準値問題に対し、食の安全や健康を守る行政機関である、かの農林水産省ですら、「今後は科学的根拠に基づいた検討の必要あり」と発言しており、これは「検討の必要があるような適当な基準を定めていました」と露呈しているようなものです。
スルホキサフロルに関してももちろんですが、その他の農薬に対しても、残留基準値に関して科学的な根拠のある適切な決め方を検討しなおし、すぐにでも改定するべきでしょう。
しかし、残念ながらその後も積極的に進めているような姿勢は見えません。
我々が声を大にしないと、このまま数十年経ってもうやむやにされて、何も変わらない可能性も大いにあると言えるでしょう。
まとめ
今回は農薬基準の甘さについてお伝えしてきました。
確かに農薬基準が甘いほど、生産の面において便利ではあると言えるでしょう。
きゃろさん
また、以前は残留基準の測定値は公的機関が出していましたが、現在は農薬メーカーが栽培して残留農薬を測った数値を、基準値を決める元の値として提出できるようになっています。
つまり、昔よりも残留基準測定における透明性が低くなっているのです。
今後、農薬基準改定の議題が上がった際、その危険性を正しく理解し、一人一人が速やかにそれを周りに伝えていくことが、この国の農薬情勢を変えるために重要になってくるのではないでしょうか。